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コンビニ経営者は「店長」なのか、それとも小売業の総合経営者なのか

コンビニ経営者は「店長」なのか、それとも小売業の総合経営者なのか

79%。経済産業省が2019年に公表したオーナーアンケートでは、1日の店頭対応時間が「6時間以上12時間未満」だったオーナーが50%、「12時間以上」だったオーナーが29%を占めた。

この数字は総労働時間ではなく、店頭で対応した時間を集計したものだ。それでも、接客や品出しを担いながら、発注、採用、教育、売上管理まで引き受ける経営者の負担を映している。

コンビニ経営者の仕事は、店頭に立つことではなく、店頭に立たなくても営業が続く条件を整えることだ。

利用客から見えるのは、レジ、品出し、清掃といった現場作業である。その背後では、人員配置、商品構成、発注、経費、スタッフ教育に関する判断が繰り返されている。仕事内容を理解するには、作業の量ではなく、誰が最終判断を負っているかを見る必要がある。

目次

コンビニ経営者の本業は、レジ対応ではなく経営資源の配分である

コンビニ経営者の仕事を接客、商品管理、売上経費管理、人材管理の4領域に分けた図
コンビニ経営者の仕事は、接客だけでなく、商品・数字・人材の管理まで含む。

見える仕事は接客、見えない仕事は判断である

コンビニ経営者の中心的な役割は、目の前の作業を自分で処理することではない。人、商品、時間、資金を配分し、店舗が継続して営業できる状態をつくることである。

レジの待ち時間が長ければ、人員配置や作業手順を変更する。欠品が続けば、発注方法や売場構成を修正する。廃棄が増えれば、曜日、天候、時間帯ごとの販売状況を確認する。現場で起きた問題を、翌日も繰り返さない仕組みに変える必要があるからだ。

ファミリーマートの公式案内でも、オーナーの仕事には接客だけでなく、発注、商品・売場管理、売上・経営管理、スタッフの採用・教育・管理が含まれている。

現場作業を終わらせるだけでは、店員の仕事にとどまる。
現場作業が滞らない条件をつくって、初めて経営になる。

── コンビニ経営者の役割

経営者の仕事は、店頭に立った時間ではなく、店舗全体に対して負った判断の範囲で測るべきである。その判断は、複数の業務領域にまたがっている。

仕事内容は、接客・商品・数字・人材の4領域にまたがる

コンビニ経営者の仕事は、接客、商品管理、数値管理、人材管理の4領域に整理できる。どれか一つだけを切り離して店舗を運営することはできない。

発注量を増やせば、検品や品出しの作業量も増える。スタッフを減らせば人件費は下がるが、レジ待ちや売場管理の遅れが発生する。採用を後回しにすれば、経営者自身がシフトを埋める場面が増える。

業務領域 主な仕事内容 経営上の判断
接客・店舗運営 レジ、品出し、清掃、問い合わせ対応 どの時間帯に何人を配置するか
商品・売場管理 発注、検品、陳列、鮮度管理 欠品と廃棄の均衡をどう取るか
売上・経費管理 売上確認、経費確認、計画修正 どの商品や時間帯へ資源を配分するか
人材管理 募集、面接、教育、シフト作成 誰にどこまで仕事を任せるか

たとえば、弁当の発注は商品を補充するだけの作業ではない。欠品による販売機会の損失と、売れ残りによる廃棄の双方を管理する判断である。シフト作成も、名前を表へ並べる作業ではなく、人件費とサービス品質の均衡点を決める作業になる。

複数の業務を関連付けて判断することが、店員と経営者を分ける。


経営者の拘束時間は、営業時間だけでなく人員体制に左右される

コンビニオーナーの店頭対応時間と休日について示した経済産業省の調査結果
経済産業省の2019年公表調査。回答者3,645件のうち、1日の店頭対応が6時間以上だった割合は合計79%、週休が週1日未満だった割合は66%。店頭対応時間の集計であり、総労働時間ではない。

長時間の店頭対応は、一部の例外ではなかった

経済産業省の2019年公表資料は、長時間の店頭対応が一定数の特殊な店舗だけで起きていたわけではないことを示している。

同調査は3,645件のオーナー回答を集計している。1日の店頭対応時間が6時間以上だった回答者は合計79%に達し、週休が「週1日未満」だった回答者も66%を占めた。

3,645件
オーナー調査の回答数
経済産業省・2019年公表
50%
店頭対応6時間以上12時間未満
オーナー本人の1日当たり
29%
店頭対応12時間以上
オーナー本人の1日当たり
66%
週休が週1日未満
調査回答者に占める割合

店頭対応が長くなれば、採用、教育、数値確認、運営改善へ使える時間は少なくなる。現場を維持するための勤務が、現場への依存を減らす仕事を圧迫する構造である。

経営者が忙しいことと、店舗経営が安定していることは同じではない。数字を読む際には、調査の対象と時点にも注意が必要になる。

公的調査の数字は重いが、現在の全店舗を直接表すものではない

2019年公表の調査結果を、現在のすべてのコンビニ経営者へそのまま当てはめることはできない。調査時期、契約形態、店舗数、人員構成によって、実際の勤務状況は変わるからだ。

さらに、調査項目は「店頭対応時間」であり、店外での採用活動、帳簿確認、連絡対応まで含む総労働時間ではない。店頭対応時間が短い回答者でも、経営業務全体が短いとは限らない。

⚠ 調査数値を読む際の注意点

掲載した数値は、経済産業省が2019年に公表した調査結果である。現在の業界平均や個別店舗の労働時間を示す数字ではない。一方、回答数は3,645件あり、調査時点で長時間の店頭対応と休日の少なさが広く存在していたことを示す資料として扱える。

調査年を明示し、対象範囲を限定したうえで使えば、数字はコンビニ経営の構造を理解する材料になる。

公的調査が示しているのは、個別店舗の未来ではなく、経営者が現場へ拘束されやすい業態の傾向である。


人手不足は、コンビニ経営者を最後の代替要員にする

コンビニの従業員不足と24時間営業への意向を示した調査結果
経済産業省のコンビニ調査2018と、公正取引委員会が2020年に公表した調査を整理。人員不足や採用難、採算、疲労が、経営者の現場対応と営業時間の判断に影響する。

スタッフが在籍していても、欠員へ対応できるとは限らない

コンビニの人手不足は、単に在籍人数が少ない状態だけを指すものではない。急な欠勤や退職が起きたときに、代わりの人を配置できない状態も含まれる。

経済産業省のコンビニ調査2018では、「従業員が不足している」とした回答が61%だった。「従業員は足りているが、何かあれば運営に支障が出る」とした回答も34%を占めている。

従業員の状況 回答割合 店舗運営への意味
十分に足り、何かあっても対応できる 6% 欠員への耐性がある
足りているが、何かあれば支障が出る 34% 代替要員に余裕がない
従業員が不足している 61% 通常運営にも負担がある

スタッフが急に休んでも店舗は営業を続けなければならない。代替できる人材がいなければ、経営者本人や家族がシフトへ入ることになる。

在籍人数と、欠員へ対応できる運営能力は別の指標である。採用人数だけでなく、勤務可能な時間帯や任せられる業務の範囲まで確認しなければならない。

人手不足の本当の重さは、経営者が経営業務へ戻れなくなる点にある。その影響は、24時間営業への意向にも表れている。

24時間営業の継続意向は、一枚岩ではなかった

24時間営業を続けるかどうかは、営業時間だけの問題ではない。深夜帯の採算、人材確保、経営者の休息を合わせて判断する経営課題である。

公正取引委員会が2020年に公表した調査では、当時24時間営業を行っていた店舗のうち、「引き続き24時間営業を続けたい」とした割合は33.2%だった。それ以外の回答者は、一時的な時短、試験的な時短、完全な時短への切り替えを望んでいた。

33.2%
24時間営業を続けたい
公正取引委員会・2020年公表
18.8%
一時的な時短を希望
人手不足などを理由とする
32.2%
時短営業を試したい
結果を見て判断する意向
15.8%
完全な時短を希望
24時間営業へ戻さない意向

同調査で24時間営業を辞めたい理由を尋ねたところ、「採算が取れない時間帯に営業したくない」が36.3%、「これから先もアルバイト等が集まるとは思えない」が23.8%、「休みが取れずオーナー自身の疲労が限界」が21.1%だった。

営業時間の長さだけで、店舗の利便性や経営の健全性を判断することはできない。需要、人件費、採用環境、経営者の負担が釣り合っているかを確認する必要がある。

営業を続けることと、持続可能な形で営業を続けることは別である。


売上が増えても、コンビニ経営者の手取りが増えるとは限らない

コンビニの売上から原価、ロイヤルティー、人件費、廃棄、水道光熱費が差し引かれて利益が残る流れ
売上高から、売上原価、本部へのロイヤルティー、人件費、廃棄ロス、水道光熱費などを差し引いた後に店舗の利益が残る。

売上高と経営者の所得を同じ数字として扱えない

コンビニの売上が増えても、経営者の所得が同じ割合で増えるとは限らない。売上高から複数の費用と契約上の負担が差し引かれるからだ。

店舗の収支には、売上原価、ロイヤルティー、人件費、廃棄ロス、棚卸ロス、水道光熱費などが関係する。売上が増えても、人員や仕入れに必要な費用がそれ以上に増えれば、手元に残る利益は改善しない。

売上は店舗を通過した金額であり、
経営者の手元に残った金額ではない。

── 売上と利益を分けて考える

たとえば、来店客が増えた店舗では、レジ要員や品出し要員を増やす必要が生じる。弁当や総菜の販売機会を逃さないために発注量を増やせば、売れ残った場合の廃棄負担も変化する。

売上の増加だけを成功と判断すると、忙しさを増やしながら利益を減らす運営になり得る。

収益管理の起点は、売上の大小ではなく、売上から何がどの条件で差し引かれるかを確認することにある。その確認には、平均モデルの読み方も含まれる。

平均的な収益モデルは、個別店舗の利益を保証しない

加盟前に示される平均値やモデル収益は、店舗経営を検討する材料にはなる。しかし、出店予定店舗の利益を直接示す数字ではない。

立地、客層、競合、人件費、賃料、営業時間、廃棄負担、ロイヤルティーの算定方法が異なれば、同じ売上高でも経営者の所得は変わる。家族が店舗へ入る場合には、その労働をどのように収支へ反映しているかも確認する必要がある。

⚠ 収益モデルを読む際の注意点

平均売上やモデル利益を見るときは、算定の前提条件と、自分が出店する店舗の条件が一致しているかを確認する必要がある。公正取引委員会のフランチャイズ・ガイドラインも、予想売上げや予想収益を示す場合には、類似店舗の実績など合理的な根拠に基づくことを求めている。

廃棄や人件費は利益を左右するが、どちらを優先して削るべきかは店舗ごとに異なる。欠品が多い店舗で発注を減らせば販売機会を失い、人員が不足している店舗で勤務人数を減らせば接客と売場管理が滞る。

経費管理は、一律に費用を削る作業ではない。支払った費用が売上と店舗の安定に結び付いているかを確認する作業である。


コンビニ経営に向くのは、働き続ける人より仕組みを直せる人である

経営者の適性は、作業量より委任と検証に表れる

コンビニ経営には現場対応力が必要だが、自分が長時間働けることだけでは安定した店舗をつくれない。仕事を任せ、結果を確認し、運営方法を修正する力が必要になる。

経営者がレジや品出しを誰よりも速く処理できれば、その場の問題は解決する。一方、すべてを自分で処理すると、スタッフが判断を学ぶ機会は失われ、店舗は経営者一人へ依存する。

経営者の行動 短期的な結果 長期的な結果
すべて自分で処理する その場では速い 属人化し、休みにくくなる
作業だけを割り振る 現場作業は分散する 判断と連絡は経営者に残る
判断基準まで共有する 育成に時間がかかる 店舗が自律して動きやすい
数値と結果を確認する 問題を早く把握できる 改善を継続しやすい

スタッフへ任せるとは、仕事を丸投げすることではない。手順、判断基準、報告が必要な条件を共有し、結果を確認することである。

接客が得意であることと、経営に向いていることは重なる部分もあるが、同じではない。自分の作業時間ではなく、自分がいなくても店舗が回った時間を成果として評価できるかが分岐点になる。

経営者の能力は、自分が処理できる仕事の量より、店舗全体が処理できる仕事の量に表れる。

コンビニ経営者は「店長」なのか、それとも小売業の総合経営者なのか——まとめ

コンビニ経営者は、レジ、品出し、清掃、発注を担う店長でもある。同時に、採用、人材育成、売上管理、経費管理、設備対応、契約確認を引き受ける小売業の経営者でもある。

公的調査が示した長時間の店頭対応や人手不足は、仕事の中心が接客だけではないことを浮かび上がらせる。人が不足すれば現場へ入り、利益が減れば収支構造を確認し、需要が変われば商品と人員配置を修正しなければならない。

コンビニ経営者の成果は、店頭に立った時間ではなく、
店頭に立たなくても店舗が回った時間に表れる。

── 「コンビニ経営者は『店長』なのか、それとも小売業の総合経営者なのか」の結論

売上が大きくても、費用と契約条件を確認しなければ利益は分からない。スタッフが多くても、判断できる人がいなければ経営者の自由時間は増えない。本部の仕組みが整っていても、地域に合わせて運用しなければ成果には結び付かない。

コンビニ経営の本質は、自分が働き続けることではなく、自分だけが働き続けなくてもよい店舗をつくることだ。

参考資料

  • 経済産業省「オーナーアンケート調査の概要」(2019年公表)
  • 経済産業省「コンビニ調査2018の概要」
  • 公正取引委員会「コンビニエンスストア本部と加盟店との取引等に関する実態調査報告書」(2020年公表)
  • 公正取引委員会「フランチャイズ・システムに関する独占禁止法上の考え方」
  • 株式会社ファミリーマート「オーナーの仕事とは」

便利さを売る店ほど、経営者自身の時間まで安売りしてよい理由はない。

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